釣狐春乱菊

(つりぎつねはるのらんぎく)

 この曲は明和7年(1770)正月、中村座「鏡池俤曽我(かがみいけおもかげそが)第一番目に上演、作者は初世 桜田治助、作曲は二世 杵屋六三郎です。初代 中村仲蔵の工藤祐経、三代目 市川高麗蔵の曽我十郎、二代目 市川八百蔵の曽我五郎で、狂言の釣狐を加味した曽我対面所作事で演じられました。
 先代 田中伝左衛門師のお話しによると「前弾の後に〈次第〉の鼓唄を置唄として唄う型で、次第の囃子に変わる三味線の旋律は〈来序→早来序→方砂切→人寄〉でありすぐヒカエで鼓唄となる」との事。
 〽︎ここに野末」から春の野にかけた並べた狐罠を、〽︎狐罠」の後、対面三重が入り、ここの所は罠の餌に誘惑されて迷い罠にかかる状態を合の手で表現し、〽︎のう憎や」は罠にかかって動けない事と煩悩の苦しみの表現、〽︎身に染む」で罠から抜け、〽︎ぞっとした」迄は地歌「古道成寺」の歌詞を使い影響を受けています。〽︎いのうやれ」から森へ帰る狐の様子を唄いチラシになります。(プログラム解説文:稀音家義丸師記述)

演奏:2019年9月21日  於:紀尾井小ホール

  唄:稀音家義文 稀音家義香 稀音家義女 杵家弥容之
三味線:稀音家一宣 杵家七可佐 杵家弥七東生 杵家陽子
  笛:福原友裕
 小鼓:望月秀幸
 大鼓:望月太左幹
 太鼓:望月正浩