王子みやげ

(おうじみやげ)

 作曲者十一世杵屋六左衛門(後三世杵屋勘五郎)手記の『御屋舗番組控』文久3年(1863)2月27日の項に「福田半香先生御行の松御宅、王子みやげひらき」とあり、「暁夢述、照海節付」とあります。
 福田半香は渡辺崋山門下の画家で、名・佶、字・暁夢といい元治元年8月61歳没という方です。作詞は作曲者の勘五郎という方もありますが半香作説をとりたいと思います。
 曲は根岸の四季を上手く纏めてあり、春と夏は二上りで、始め寺音楽を使っています。秋と冬は三下りで〽︎風も何時しか」の唄の途中で一の糸を上げて三下りにします。歌詞に即した巧みな作曲で〽︎枯野原」の後ライ序を使い王子の狐を表現しています。二上りの所で有名な料理屋「海老屋」「扇屋」の名を入れてあります。(プログラム解説文:稀音家義丸師記述)

演奏:2019年9月21日  於:紀尾井小ホール

  唄:稀音家義丸 杵家弥佑
三味線:東音大宮悟 杵屋佐之義