花笠踊

(はながさおどり)

 この曲は上演年代も作曲者も不明ですが、長唄でも舞踊でも資料的に非常に大事な曲です。
 明和7年(1770)11月、江戸 市村座で「梅顔寿丹前」が上演されましたが、「花笠踊」の前半〽︎花の顔見世」から〽︎さても見事え」迄が「寿丹前」。後半の〽︎さんさオオそれ」から段切迄が、同年正月 中村座上演の「山桜姿鐘入」の後半で、2曲を一つにして出来た曲です。
 どちらも初代中村弥八の振付で舞踊中村虎治派に伝承されて参りました。前曲が冨士田吉治・杵屋弥三郎。後曲は湖出市十郎・二世杵屋六三郎でどちらが編曲したか不明です。
 長唄ではこの2曲は伝承されていないとされていましたが、この「花笠踊」の御蔭で二曲の半分が伝わり明和期の歌舞伎音楽研究に重要な資料を得ました。中村弥八が没したのは安永6年ですので上演されたのは明和8年から安永6年の間と思われます。(プログラム解説文:稀音家義丸師記述)

演奏:2019年9月21日 於:紀尾井小ホール

  唄:杵屋勝彦 杵家弥佑 稀音家義文 稀音家義香 稀音家義女 杵家弥容之
三味線:東音大宮悟 杵屋浩基(現:杵屋勝九郎) 杵屋佐之義 杵家七可佐 杵家弥七東生 杵家陽子
  笛:福原友裕
 小鼓:望月秀幸 望月左太寿郎
 大鼓:望月太左幹
 太鼓:望月正浩